リジェネラティブ・アーバニズム展ー災害から生まれる都市の物語 三井不動産創立80周年記念事業
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アイコン 水成都市

水成都市Hydroactive City

水の循環と一体化し
洪水や干ばつと共存する。

現在、世界各地の沿岸都市は、洪水、高潮、ゲリラ豪雨、津波など、水によって引き起こされる様々な災害のリスクに直面しています。気候変動により深刻化する、これら水害の脅威に対応するため、私たちは都市と水との関係を根源から再構築する必要に迫られています。
この井戸で紹介するリジェネラティブ・アーバニズム「水成都市」は、河川や海などの水の領域と、ヒトの居住地という2つの異なるプラットフォームの共存を、ミクロとマクロの両面からダイナミックに再定義する都市生成の物語です。

フィルタリング・ランドスケープ

海や河川から市街地に押し寄せる水だけでなく、干ばつや人口増加による水資源の枯渇も、多くの都市にとって火急の課題ですが、水成都市の「フィルタリング・ランドスケープ」は、 スポンジ構造を持つ地層で、高潮や洪水を吸収、浄化、貯留、分配し、 水害と水不足の両方に順応した景観を作り出しています。

河川からの浸水を抑制する護岸堤防(ごがんていぼう)の周囲に緑地を兼ねた貯水池を作り、高台にある居住地区から河岸に到る斜面には、水の濾過処理機能が埋め込まれています。住宅の庭や緑地帯など街なかに分散した地表面は雨水を集水し、水は斜面地の地下バイオフィルターで濾過されながら貯水池に注がれます。

この緑地帯は区画全体を編み込むように配置され、集水機能だけでなく、都市生活にも潤いを与えるパブリックスペースとなり、貯水池には住民が水環境について学ぶ学習施設が整備されています。

地形にあわせて広範囲に張り巡らされた水質浄化ネットワークは、「水成都市」固有の景観=「フィルタリング・ランドスケープ」として可視化されており、住民は水を脅威としてではなく、都市生活に必要不可欠な資源として受け入れ、水と都市の共生から新しい産業やライフスタイルを生み出しています。

水棲集落

水成都市の海岸では、海面上昇をむしろ契機に、水と人が共存する画期的な居住スタイルを生み出しました。

この地域の住民は古くから水産業に従事していましたが、地球温暖化による水位の上昇や生態系の変化、人口爆発による資源枯渇や海洋汚染といった諸問題が複合的に絡み合い、長く続いてきた養殖や沿岸漁業は衰退の一途を辿ってきました。

そこで人々は、養殖筏や漁礁といった漁業施設と集落を海上で一体化する、職住一体の「水棲集落」で海へと移住しました。
「水棲集落」での暮らしは陸地よりもさらに親密に、水の循環や水位変動を生活サイクルに取り込むことで、海と陸の境界における生産と流通のシステムを作り替えています。

かつて津波や高潮対策のため、海と集落を分断していた防潮堤は、陸地を守るだけでなく、海水や太陽光を用いた再生可能エネルギーの発電インフラや、アクアツーリズムの起点となり、漁業を軸とする地域コミュニティの再活性化と、地場産業の多角化をもたらしています。

水陸両用ショップハウス

沿岸部はかつて海洋交易の拠点として繁栄したため、貴重な歴史文化遺産が数多く残されていますが、それらは低地ゆえに海面上昇の変化に対して脆弱でした。
そこで水成都市の旧市街地では、観光と防災を組み合わせた、歴史的保存地区の再開発が行われています。この歴史地区では一階を店舗、二階以上を住居にした、伝統的なショップハウスが残っています。その積層構造と職住一体の住まい方に着目して生み出されたのが、 高潮による浸水被害を想定した「水陸両用ショップハウス」です。
屋根の上に宿泊機能を増築することで、魅力ある外観を保存したまま、ツーリストを受け入れるキャパシティを増やしています。
上層階への垂直動線は古い建物を補強する機能とともに、1階浸水時には人々の迅速な避難を可能にします。
また、上層階は可動性の間仕切りと組み立て式の家具を備えており、災害時は一時的な避難所に早変わりします。
観光と防災を組み合わせた「水陸両用ショップハウス」は、文化遺産を保護しながら、地域の賑わい創出にも貢献し、

経済と文化の両面からリジェネラティブ・アーバニズムの恩恵をコミュニティにもたらすでしょう。

このように「水成都市」は、都市そのものが水の循環と積極的に一体化することで、洪水や干ばつなど、水によって引き起こされる災害と都市の共存・共栄を可能にしているのです。


水成都市に関する各大学の研究内容

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