リジェネラティブ・アーバニズム展ー災害から生まれる都市の物語 三井不動産創立80周年記念事業
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群島都市Archipelagic City

集中から分散へと進化した
防災都市ネットワーク。

地球温暖化により発生頻度と規模と増した高潮や台風、森林火災など、複合的災害に直面するこの地域では、小さな自治組織が群島のようにつながることで、都市の一極集中リスクを回避し、災害に強い都市連合体を作り出しています。

アイランド・ディストリクト

平坦な低地に点在する「アイランド・ディストリクト」では、造成時に掘り出した土砂を盛土して、 池や島など、凹凸した起伏ある景観を人工的に作り出しています。

人工池には植物が生い茂り、都市緑化と水辺のレクリエーションを生み出していますが、ひとたび暴風雨や高潮が発生すると、その起伏と集水機能で、押し寄せる水のエネルギーを減衰させ、水位をコントロールします。島々の上に築かれた居住地は浸水レベルよりも高く造成されているため水害のダメージを受けることなく、中空に渡されたプロムナードは群島都市のアクセスを速やかに回復させます。

大きな津波や洪水は引き波のエネルギーも脅威ですが、「アイランド・ディストリクト」は都市に侵入する水の動きを予測した造成計画によって、入り込んだ濁流をゆっくりと海に放出します。こうした環境下で都市生活をおくる住民にとっては、水から徐々に解放されていく時間や景色の変化も、日常の暮らしの一部なのです。

タワー・アンダー

沿岸部では、防潮堤などの強固な防災インフラで台風や津波を跳ね返すのではなく、群島都市特有のビルディングタイプ「タワー・アンダー」が、自然の強大なエネルギーを吸収しています。海岸線に林立するタワーの高層部は岩盤層まで到達する杭で支えられ、強い地震動や高潮の水圧、台風の風圧に耐えるだけでなく、構造に組み込まれた垂直式風力発電システムで暴風を電力に変換します。風力から得られる電気はタワーでの都市生活を支えるだけでなく、他の自治組織への電力供給や、巨大災害時の安定的な電源確保を可能にします。

タワー基壇部(きだんぶ)は海面上昇で水没しても強度と機能を損なうことなく、島のように海面に突き出て、自給自足の環境を保持することが出来ます。他のタワーとは中空のブリッジで連結されているため、基壇部が浸水してもタワー間のネットワークが損なわれることはありません。

クラスター・ブロック

山火事の発生リスクを抱える乾燥した森林地帯では、複数の自立した自治組織が「クラスター・ブロック」と呼ばれる、大規模火災を想定したゾーニングと、道路網による防災戦略を共有しています。

この地域では、5つの居住区が行き止まりのない幅広の道路で区画されています。道路は延焼を止めるバリアーや、消火活動や住民避難のための導線になります。交差点や中央広場など、交通の要所に配置された、コワーキングスペースや学校、駅、図書館などのハブ的な公共空間も、ひとたび山火事が発生すると、熱や煙から住民を守る耐火性の避難所になるよう設計されています。

このように「群島都市」は、従来の集中型ではなく、都市機能をあえて分散する戦略で、気候変動に起因する様々な災害を受け流すとともに、リスクをあらかじめ分散させているのです。
エネルギーや環境政策においてそれぞれ自立したクラスター型の自治組織をつなぐのは、ソフトとハードの両面で高度化したネットワークと、災害との共存しながら繁栄を目指すリレジェネラティブな思想なのです。


群島都市に関する各大学の研究内容

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