リジェネラティブ・アーバニズム展ー災害から生まれる都市の物語 三井不動産創立80周年記念事業
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アイコン 共生都市

共生都市Biophilic City

人間と動植物が
共同で作りあげる都市生命体。

無秩序な都市の拡大が自然環境を脅かすにつれて、人間の生活圏と生物圏の間の軋轢は高まり、災害リスクは増していきます。自然生態系との均衡を保つには、人間もその循環構造のなかで固有の役割を担う必要があります。
この井戸で紹介するリジェネラティブ・アーバニズム「共生都市」は、 その生成のプロセスにおいて人間の活動と動植物のサイクルが、新陳代謝を繰り返しながら有機的に結合し、都市そのものが多次元的な混合物となっていく驚くべき手法です。

リフォレスト・シティ

沿岸地域に位置する「リフォレスト・シティ」は、気温上昇の原因となる二酸化炭素の排出を止めるため、都市における新しい緑の循環を生み出しました。

シティ内に林立する「プランテーション・タワー」は、垂直に発展することで土地不足を解消し、住宅・農林業・レジャーを組み込みながら樹木のように成長していきます。タワーの成長を支えるエネルギーは、上空に浮遊する「ソーラー雲」によって太陽光から集められます。「ソーラー雲」は気球のように日中は上昇、夜間はタワーの頂上に着地して、蓄えた太陽エネルギーを農林業、水循環、交通インフラなど、さまざまなニーズに分配します。

シティの食糧供給は自給自足を原則とし、「プランテーション・タワー」では農作物の栽培と流通が活発におこなわれています。農地や家庭から出る廃棄物も処理プラントで無駄なくバイオ燃料に転換されています。

タワーの間を縫うように流れる「ウォーター・スロープ」は、谷状の地形を利用して集水した雨水を浄化し、家庭用水としてタワーの基壇部に貯水するだけでなく、灌漑や木材運搬などにも利用されています。住民の交通インフラは中空に敷かれ、林床への干渉を防ぎ、独自の生物多様性を育みます。

このように「リフォレスト・シティ」は、都市空間を森林生態系として段階的に発展させる時間スケールのなかで、人間と自然が共生する暮らしを独自に形成しています。

マウンテンライオン・アーバニズム

「マウンテンライオン・アーバニズム」は、多くの野生動物が生息する山岳地帯に建設されたレジデンス施設で、生物多様性を保護しながら、この地域で頻発する山火事に対応しています。

レジデンスの開発は野生動物の生態に配慮して行われました。食物連鎖の頂点であるマウンテンライオンの移動ルートを調査すると、森に敷かれていた人間のための道路が、彼らの水資源へのアクセスを妨げ、生息地を制限していることが分かりました。そのためこの建築は、マウンテンライオンを含む野生動物たちの水源への安全な導線を、多層構造のなかに組み込んでいますさらに森林火災の際は、人間が退避した後に動物たちを受け入れる防火・防煙シェルターになり、状況に応じて利用主体を入れ替えることが可能なのです。

野生動物たちの保護は、住民が山火事を含めた自然のサイクルを理解し、共存への意識を高める上で重要です。レジデンスをハブ拠点に、周囲の山々に点在する保水センターやキャンプ場では、エココミュニティが主導する共生教育プログラムが恒常的に行われて、山火事の予防につながる森林整備や動植物の保護への住民の積極的な参加を促しています。

ミツバチ・コモンズ

生物多様性の保全には、昆虫などの小さな生物の生態にも注意を向ける必要があります。なかでもミツバチの受粉行動は、人間の食糧生産に影響を与えることが知られており、自然界との均衡に大きな役割を担っています。また、蜂蜜の味、粘度、季節ごとの生産量などの識別と分析は、自然環境の実態把握と、変化の予測に有効です。

「ミツバチ・コモンズ」は、ミツバチの生息環境を模倣し、人間とこの小さな生物の二重社会を形成することで、気候変動に対応するリジェネラティブ・アーバニズムです。ハニカム型グリッドで居住地全体を区画し、中心には蜂蜜の収穫・加工施設を置き、周囲に花粉や花蜜が豊富な植物が計画的に配置されています。

住民の活動や土地利用は、ミツバチの受粉や集蜜を妨げないよう抑制されていますが、この昆虫の生息環境を守ることで、人間社会とその周りにある生態系を管理し、環境の変化に強い都市構造を作り出しています。

このように「共生都市」の人々は、自然を征服するのではなく、その生命現象を観察し、模倣することで、エコロジカルな都市を作り上げています。
人間とそれ以外の生物の共存・共栄をアシストするその有機的な都市構造は、気候変動の未来を生き抜くために生まれた都市生命体といえるでしょう。


共生都市に関する各大学の研究内容

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